糸・布からはじまる制作のこといろいろ
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「朝鮮半島の民衆的工芸/POJAGI as a portrait -呉夏枝の写真作品とともに-」
「朝鮮半島の民衆的工芸/POJAGI as a portrait  -呉夏枝の写真作品とともに-」展に写真作品を出品します。
併設展示「碓井ゆい −shadow work−」
会  期:2016年4月16日(土)−6月19日(日) 9:00-17:00
会  場:
小山市立車屋美術館    栃木県小山市乙女3-10-34
休館日:
4/18(月),22(金),25(月)
5/2(月),6(金),9(月),16(月),23(月),27(金),30(月),
6/6(月),13(月)


 今回の展覧会のメインとなりますポジャギは、日本で言う風呂敷や袱紗のようなも
のです。特に今回はチョガッポというパッチワークの技法でつくられたものが展示され
ます。韓服を縫製する際に残ったはぎれを、見事な色彩構成で縫い繋げて作られていま
す。

 私がポジャギと出会ったのは、1999年、初めて訪れたソウルの仁寺洞という町でし
た。ポジャギとの出会いは、その数年後、ソウルへの留学に私を導いたと言っても過言
ではないと思います。留学中は、韓服のお店を経営する職人の先生と、民俗博物館での
朝鮮時代に着られていた韓服を復元するクラスを受講し、縫製を勉強しました。ミシン
と手縫いという時間軸で考えるとまったく違う体験でしたが、共通する美意識を感じる
と共に、今の私の制作と染織品に対する探究心をつちかう経験でした。
 今回の展覧会では、ポジャギに関するワークショップを行う予定で、このような10年
以上も前の経験を思い起こしつつ、当時とは違う視点で資料を読みながら準備をしてい
ます。
 
 今回の展示に関して、担当の学芸員さんからポジャギの美術工芸品としての美しさだ
けではなく、それを制作した女性たちの存在も浮かび上がらせたいというお話を伺いま
した。私の写真作品とあわせてご覧いただき、それらに携わった女性たちに思いを馳せ
ながらご鑑賞いただけるとうれしく思います。




「記憶をまとう」展@小金井アートスポットシャトー2F






photo: 山本糾、©Haji OH

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1993年、済州島へ、祖母たちの帰郷の旅
地図すら見る事もなく想像した「島」
島は私の何かを喚起する
2004年、はじめて訪れた済州島
祖母と母のチマ・チョゴリをまとう
島の風をはらむチマ
 
それらの記憶をつむいでみる
その糸はいつしか私の皮膚となる

In 1993, a last homecoming trip of my grandmother with her daughters to Jeju-Island.
The  Island” that I imagined without seeing a map.
The “Island” has provoked my imagination.
In 2004, my first trip to Jeju-Island.
I wore my grandmother’s and mother’s chima-chogori there.
Strolling down a path on the Island, the wind was blowing  into a chima.
 
Try to spin these memories.
The threads that have constituted the memories are becoming my skin.

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会期:2014年6
月14日(土)〜6月29日(日)
場所:小金井アートスポットシャトー2F
主催:「問いかけながら道をゆく」展実行委員会


 
光のけはい、ゆらめく影
3月9日、無事に展覧会をおえることができました。
たくさんの友人たちをはじめ、今回はじめて私の展示をご覧いただいた方々、ご来場いただきありがとうございました。

2年半という活動の区切りとしての展覧会でした。
作家というのは、孤独なもので、その時間と作業の中から作品が生まれてくると、日々感じていますが、この2年半は、私のやろうとしていることを一緒につくりあげ、支え、共有してくれた仲間がたくさんいたことに、ほんとに感謝しています。

この2年半の活動や、展覧会については、ゆっくりと文章にしていきたいと思います。


ありがとうございました。

@江之子島文化芸術創造センター










@kioku手芸館「たんす」









  

写真: 上から2、3段目:Haji OH
上記以外:福永一夫
©Haji OH


 
「EX・POTS 2011-2013」展ー光のけはい、ゆらめく影
「EX・POTS 2011-2013」がはじまりました。



2年間のリサーチとしてのワークショップを行いながら、その集大成としての展覧会です。
「光のけはい、ゆらめく影」というタイトルは、
2年間のリサーチの中から感じたことを言葉にしたものです。
今回の作品では、写真作品を展示しています。これらの写真作品は、kioku手芸館たんすの2階をスタジオに撮影したものです。

午後からの美しい光が差し込むこの部屋は、かつてタンス屋さんだったご主人の工房だったようで、その痕跡が残っています。



私はこの2年間、何かプランを打ち立てて、それを目標に地域の人たちに参加してもらうのではなく、
私の日々の制作の延長線上で、この西成の山王地区での活動が交差し、私の関心と交わる出会いを探しながら活動をしてきました。
まずは出会いの場、そして、記憶を語る場として、「編み物をほぐす/ほどく」ワークショップを開催しました。
そこでは、編み物をほどくことで、「昔、お母さんの手伝いでよくやったわ」という話から、参加された方の思い出話を聞かせてもらうことができました。ワークショップを終えると、スタッフの間で、聞いた話を共有し、私は制作ノートにそれらの記憶を記していました。
今回の作品では、実際に聞き取りした話をお見せしたりすることはしませんでしたが、これらのリサーチとしてのワークショップや、日々、訪問させていただいたお宅での発見や出来事を私なりに吸収し、作品に反映しています。
2会場での展示は、盛りだくさんですが、それでもまだ、制作しきれなかったことがあり、今後の活動へとつながっていくことを感じています。

ぜひ沢山の方にご覧頂きたいです。どうぞよろしくお願いいたします。


<展覧会概要>
地域密着型のアートプロジェクトとして2003年より活
動するブレーカープロジェクトは、2011年より3年間の継続プログラムとして、梅田哲也、呉夏枝、大友良英、山田亘の4名のアーティストと共に西成区山王を拠点に創作活動に取り組んできました。

各プロジェクトの集大成として、2014年2月11日(火・祝)に西成区民センターにて実施する「子どもオーケストラ」のコンサートを皮切りに、2月15日(土)から3月9日(日)まで、大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]、および、まちなか会場(西成区、山王周辺)において、展覧会を開催します。

それぞれの取り組みでは、地域の方々の協力や参加を得て、予期せぬ出会いや出来事が連鎖していくなかで、活動はゆるやかに流動しながら深化していきました。そういったプロセスからどのような作品へと結実/昇華するのか、多くの皆様にご覧いただければ幸いです。

http://breakerproject.net/archives/000132.php
※会期は会場やプログラム毎に異なりますので、ご注意ください。

■enoco会場
大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]
山田亘「西成なるへそ新聞」
呉夏枝「光のけはい、ゆらめく影」
http://breakerproject.net/archives/000136.php
会 期|2月15日(土)〜3月2日(日)※月曜休館
時 間|11:00-19:00(最終日は17:00まで) 
場 所|大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]
料 金|一般 300円/高校生以下 無料

<アクセス>
千日前線・中央線「阿波座」駅8番出口から西へ約150m
http://enokojima-art.jp/access/


■まちなか会場 kioku手芸館「たんす」
呉夏枝「光のけはい、ゆらめく影」
http://breakerproject.net/archives/000136.php

会 期|2月16日(日)〜3月2日(日) ※月曜休館
    3月7日(金)〜9日(日)
時 間|13:00〜19:00
場 所|kioku手芸館「たんす」
料 金|無料

<アクセス>
地下鉄御堂筋線/堺筋線「動物園前」駅2番出口より5分
※ 北門通り沿い「北門交番」の4軒隣。「鈴木タンス店」の黄色い看板が目印
http://goo.gl/maps/14zSj


■ 呉夏枝《ギャラリートーク》
染織の技法を用いて語られなかった記憶や時間の存在を浮かび上がらせる作品を制作してきた呉。
本トークでは、伊藤俊治氏から想像力と記憶の再創造の場についてメモリアル・ミュージアムの視点から語っていただくとともに、呉の本作品と2年半におよぶリサーチと制作活動について、対話形でお話しいただきます。
□日時:3月1日(土)18:00〜19:30
□会場:kioku手芸館「たんす」
□ゲスト:伊藤俊治(美術史家/東京藝術大学先端芸術表現科教授)
□料金:無料
□定員:30名(要申込・先着順)
□申込先 E-mail:bp.tansu@gmail.com




 
展示記録「針々と、たんたんと」
呉夏枝×青森市所蔵作品展「針々と、たんたんと」
国際芸術センター青森
2013年2月10日-3月17日


一枚ずつ丁寧に包まれた収蔵品。結び目をほどくと、黒光りした藍の麻布に白糸の刺し模様がほどこされた衣は華やかで、凛と佇んでいる。さまざまな濃淡の藍の色味と、柔らかな風合いの麻の衣は、日々の労働と時間による造形物。すり切れた部分にあてがわれた布、そこに刺し重ねられた白い糸のかさぶた。くたくたになった布からあらわれるカタチ。そこには持ち主の記憶と身体の痕跡がつくる衣のしぐさが浮かびあがる。

シンシンと、タンタンと、つくり、おもい、すまう。 呉夏枝






 制作者吉川ひさ

   当時十五才

 明治二年生

 昭和三十八年二月八日 九十四歳で死亡

 明治十年 麻の種を植える

 麻の繊維を取り、その麻を織り、自分でカヤを作り、嫁入り道具として持参

 金具も付いていたが戦時中金物提出の折、貴金属と共に提出し、現在はついていない

                        孫 北畠 みつ







上6枚写真撮影:山本糾

つづれ刺し着物

つづれ刺し着物



こぎん着物
こぎん着物
こぎん着物(染めこぎん)

こぎん着物(染めこぎん)

こぎん着物

こぎん着物(二重刺し・染めこぎん、上:外側、下:内側)

汗はじき

菱刺し・つづれ刺し着物

こぎん着物(染めこぎん)

こぎん身頃

こぎん身頃(二重刺しこぎん、上:外側、下:内側)

菱刺し・たっつけ


つづれ刺し・股われ

つづれ刺し・たっつけ(内側)

写真撮影・©:OHHaji
画像転用禁止



 展覧会が終わって、ACACからカタログが送られてきた。その中には、館長さんからのお手紙とともに、来場者からのメッセージも添えられていた。その中には、今回展示した蚊帳の寄贈者北畠さんのご家族からのものもあり、ちょうど今年は、その蚊帳をつくられた吉川ひささんの50周忌ということだった。展覧会がはじまったのは、2月10日、ひささんの命日はその二日前だった。
 収蔵品を初めて目にしたときの感動は、今でも鮮明におぼえている。何をどう展示するのかーそれを問いながら、選択することや展示することの意味を考えさせられた時間だった。一枚ずつ写真におさめながら、自分の目が試され、鍛えられていくのを実感した時間だった。収蔵品たちが語ってくれること、そのかたりが、来場者に届くように、できるだけ「そぎおとした」かたちで展示すること。今回の展示はその思考の結果ともいえる。
 収蔵品とむきあった時間、ひささんの作られた蚊帳との出会いと、50周忌という節目の重なりは、長い時間の連なりの中に、今回の私のしごとはあり、この展覧会があるのだと実感した。そして、この展覧会が、その時間の中の一つのーしるしーになればと願う。
ほんとうに、ほんとうに大切な時間を過ごした。

<展覧会レビュー>
ART SCAPE 工藤健志氏(青森県立美術館学芸員)

一人でみるときどき娘たちとみる


カタログ掲載文章

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針々と、たんたんと

呉夏枝


 817日収蔵庫での調査5日目。10時半すぎ、収蔵庫に到着。職員の方にあいさつをして2階へ。いつものように机に資料を出し、床に布を敷き、カメラ、手袋を出し、準備をはじめる。この日の予定は、カヤ、下着類の調査。収蔵室内でカヤの入った箱を見つけるも、高い所にしまわれており、職員の方にお手伝いいただいて箱をおろす。その箱を開けると、一枚の半紙に墨書きで手紙がしたためられていた。


 制作者吉川ひさ

   当時十五才

 明治二年生

 昭和三十八年二月八日 九十四歳で死亡

 明治十年 麻の種を植える

 麻の繊維を取り、その麻を織り、自分でカヤを作り、嫁入り道具として持参

 金具も付いていたが戦時中金物提出の折、貴金属と共に提出し、現在はついていない

                        孫 北畠 みつ


 20128月、8日間通ったこの収蔵庫には、旧稽古館が所蔵していた民俗資料が収められている。その中の一室には、主にこぎんや菱刺しなどの着物類、生活雑貨が置かれている。大きな棚が置いてあり、整然と箱が並べられてある。着物関係の資料は、一着ずつたとう紙に包まれ、数着をひとまとまりにして箱にしまってある。今回、調査を始めるにあたって、旧稽古館での展覧会の資料や、データベースで収蔵品をチェックし、収蔵庫での初日をむかえた。まずは、事前に目星をつけた収蔵品から調査を開始した。そうすると、同じ箱に入った他のものも気に掛かり、結局、同じ箱にあるすべてのものを開いて見ることになった。一着ずつ、紐解き、布の上にひろげ、写真を撮影し、メモをとる。この繰り返しで一日目に見られたのはおおよそ30着ほどであった。当初は、こぎん、菱刺し、裂き織り、ドンジャ(夜着)など、布にまつわる手仕事、日用品を5日間で一通り見たいと思っていたが、こぎんだけでも沢山あり、こぎんと菱刺しに的をしぼって見ることにした。それまで、こぎんといえば、紺地に白の刺し模様が入ったものと思っていたが、それだけでなく、地域による刺し模様の違いや、二重刺しこぎん、染めこぎんといわれるものがあることを知った。初日の調査で特に目を奪われたのが、データベースでは見分けることのできない質感をもつ着物類であった。

 こぎんは、もともと「小布」「小巾」「小衣」などと書かれ、麻布で作られた短い単衣の仕事着をさす言葉であった。補強、保温のための刺し子が、次第に独特の模様を生み出し、「こぎん」となった。津軽地方でつくられていたこぎんは主に三つの地域でつくられ、「東こぎん」「西こぎん」「三縞こぎん」とわけられる。また、津軽地方のこぎんが、着物に刺されたものであるのに対し、南部地方では、前だれ(前掛け)や、たっつけ(股引き)などに刺され、「菱刺し」と呼ばれている。

 青森は寒冷地で、綿花の栽培を行なうことができなかった。また、藩政時代の倹約令によって農民の生活は制約され、保温性のある木綿布もその対象であり、農民が着用するのは麻布に限られた。こぎんの刺し模様も、当初は麻糸で刺されていたが、次第に木綿糸が入手できるようになってから、紺の麻布に白の木綿糸で刺されるようになった。


 今回の調査では、紺地に白の華やかなこぎんだけでなく、二重刺しこぎんや、染めこぎんは私にとって新たな発見であった。二重刺しこぎんは、こぎん着物のやぶれたところや弱くなったところに布をあてがい繕ってある。模様の隙間を埋めつくすように厚ぼったく重ねられた綿糸の刺しあとは、まるで身体の傷を覆うかさぶたのようである。

 青森でつくられた麻布は、大麻がほとんどで、苧麻はわずかであった。大麻は一年生で、収穫量も多い。それに対して苧麻は、多年生で、収穫量は少なく、栽培の手間もかかり上等品として貴重がられていたようである。冒頭の文章にあるように、麻を自家用に栽培し、衣服、袋物、布団カバーや蚊帳がつくられていた。織りたての麻布は、そのままでは固く、灰汁で煮て柔らかくし、天日にあて水につけることを繰り返して晒す。晒して白くなった麻布を自家栽培した蓼藍で染色するか、紺屋で藍に染めてもらう。染めたあとはさらに木槌で叩いて柔らかくした。

 紺地に白の刺し模様が汚れると、さらに藍につけて染めたのが染めこぎんである。特に、年配の方が着たらしい。こぎんは世代をわたって着用されていたという。染めこぎんをみていると、晴れ着から日常着へ、そして仕事着へと、ほどいては仕立て直され一枚のこぎんを惜しむように大切に着られていた様子がわかる。洗っては叩く、染めては叩くを繰り返すことで独特のやわらかさをまとい、日々の労働、身体の痕跡としての布のしぐさが生々しくあらわれている。また、苧麻で仕立てられた染めこぎんは、黒く光沢し、苧麻独特の艶と張りのある質感へと変容している。 

 二重刺しこぎんの刺し跡や、染めこぎんの藍の色味、よごれやすり切れた跡は、日々の労働の証であり、一人のひとがそこに生きた証ともいえる。そのような痕跡は、当然ながら意図してできるものではなくどのようなものとも比較することのできない価値がある。

 こぎんや菱刺しの模様は、布地の経糸の目数をひらい刺していく。こぎんは奇数目をひらい、菱刺しは偶数目をずらして模様をつくる。こぎんには、「ベコ刺」や「豆こ」など動物や植物の名がついた文様が数十種類あり、基礎となるものを中心にして、連続させたり、経、緯、斜めの直線で囲んで模様がつくられる。農村の女児は5,6才になれば、祖母や、母、姉から手ほどきをうけて針と糸を手に小物を地刺しするようになり、10才位で模様が刺せるようになるという。14才くらいになれば着物を刺すようになり、蚊帳と共に嫁入り道具として、4,5枚は準備したそうだ。上手な人は、多種類の模様をさす人もいたようであるが、地域によって、数種類の模様だけを刺すので、地域による特徴が見られたそうだ。模様が各地域へとひろがったのは、ある村の娘が、別の村に嫁に行くことで伝わったとのことである。

 麻の種を植えるところから始まる途方もない作業をへて生まれるこの衣服は、大変な苦労の積み重ねによるものであるが、多様な模様が生み出され、それが受け継がれてきたことは、そこに楽しみや、喜びもあったにちがいない。実際に、「友達や仲間と寄り合って競争して刺すこともあった」そうで、その光景が目に浮かぶ。こぎん刺しの模様の中には、「轡繋ぎ」といわれるものがある。これは、魔除けの意味があり、日常の祈りのあらわれともいえる。このように、糸のたしかな手触りと共に縫い込まれる祈りがあったに違いないと思う。シンシンと降る雪の中で布にむかい刺す時間は、誰にも邪魔されないかけがえのない自分の時間である。その時間を大切にしながら、淡々と日々の営みをこなす女性たちがいた。

 今回の展示では、2004年、2005年、2007年に制作した作品を共に展示した。私が染織という技法を選択した経緯には、母親の影響がある。洋裁をする母の側で、幼い頃、まねごとのように人形の服を作っていた。大学で染織を専攻し制作する私を見て、母は祖母の遺品のチマ・チョゴリや、サンベ(大麻布)を処分せずにとっておいてくれた。《三つの時間》(2004年)は、祖母、母、私自身それぞれのチマ・チョゴリを着て撮影した写真を、祖母が残したサンベに転写した作品である。日常の記憶の中で重なるそれぞれの時間をあらわした作品である。《散華》(2005)と《花斑》(2007年)は、第二の皮膚としての衣服をモチーフにしている。布を織るということはその身ぶりの痕跡を残すことであり、布はそのあらわれである。《散華》は布を織ることからはじめ、衣装に仕立てあげた。そこにたしかにいる存在の証としての衣装である。

 衣服に残る痕跡は、個人の物語を語っているようである。それを、一着ずつ丁寧に包んで保管し、歴史や背景を綴り、その物語を大切につないできた人たちがいる。冒頭の北畠みつさんの手紙はまさにそれをあらわし、つながる個人の物語がみえてくる。それが私の作品と遠くのほうで結びつくのが見えたとき今回の展覧会が見えてきた。――針々と、たんたんと―― 音が聞こえてきたのである。




参考文献:

刺し子の世界受け継がれた技』、青森市歴史民俗展示館稽古館、2005年、5頁(カタログ)。

 『装う生活着にみる先人の知恵と技・こぎん刺しと菱刺しの世界』、青森市歴史民俗展示館稽古館、1999年、7頁(カタログ)。

 飯田 美苗「麻糸のできるまで」、『季刊稽古館』、vol.15 財団法人稽古館友の会、1995年、11頁。

 横島直道編著『津軽こぎん』、日本放送出版協会、1974年、23頁。

 『津軽こぎん』、149頁。『装う』、912頁(カタログ)。

 『刺し子の世界』、28頁。

 『装う』、12頁。

 『津軽こぎん』、79-81頁。

 『津軽こぎん』、149頁。

 『刺し子の世界』、12頁。


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呉夏枝×青森市所蔵作品展「針々(しんしん)と、たんたんと」
国際芸術センター青森にて、個展を開催します。
 
呉夏枝×青森市所蔵作品展「針々(しんしん)と、たんたんと」

 染織を学び、織る、染める、結ぶ、染めるといった手法を用いて作品を制作する呉夏枝は、衣服や織りの行為を通して女性たちの、無名の人々の、語られなかっ た歴史や時間を浮き彫りにする視点をもった作品を制作しているアーティストです。本プログラムはこうした芸術家の視点を通じて、青森市所蔵の伝統工芸品や 収蔵品を「もう一つの視点」から提示することを試みた展覧会です。今回は、麻織物を中心に、こぎん、さぐり、菱刺しが施され仕事着や肌着、あるいはかやな どといった所有者の時間と歴史を感じさせるような収蔵品と呉夏枝の過去作品および新作の写真作品を展示します。衣服は第二の皮膚であると言わんばかりの身 体のぬくもりすら感じさせるそれらの作品の展示を通し、衣服や布に秘められた名もなき人々の濃密な人生や生活を浮き上がらせます。(国際芸術センター青森のwebより

場所:国際芸術センター青森
日時:2/10-3/17
時間:10:00-18:00

ぜひご高覧ください。
よろしくお願いします。







2011年12月 作品展示@京都
博士課程最終審査作品展
期間:2011/12/7-14
場所:京都市立芸術大学 大学会館ホール

会場内に音声:こちら
(you tube)


《妹からのてがみ》









《あるものがたり》





《記憶の棲殻(スミカ)》










《妹からのてがみ》 2009年
ジュートロープ(黄麻)、刺繍枠、針、蜜蝋、鉄製フック、映像(静止画)、
ニッティング、マクラメ、カーボン紙にて転写
サイズ可変

《あるものがたり》 2010年
ジュートロープ(黄麻)、絹糸、女性の声
オリジナルテクニック
40×127×9cm

《記憶の棲殻》 2010年
ジュートロープ(黄麻)、石膏、女性の声
ニッティング、マクラメ
サイズ可変

写真撮影:福永一夫
copy right: Haji OH

記録動画はこちらから YouTube

Inner Voices-内なる声ー展 はじまりました
Inner Voices-内なる声ー展 @金沢21世紀美術館がはじまりました。

搬入、オープニング、そしてアーティストトークも無事に終えて大阪に戻ってきました。
準備期間が短かったので、どうなることやら、すごく心配だったけれど、
やっぱり展覧会初日はやってくるんですね。
美術館スタッフのプロフェッショナルな仕事に感動して、とても勉強になりました。
そして、一緒に参加している作家のみなさんの作品も、ほんとうにすばらしくて、
制作に真摯に向き合っているのがとてもよく伝わって、
キュレーターさんたちの、細やかなお心遣いのおかげもあって、オープニングが終わって、さよならするのが、名残惜しかったな。
でも、またどこかで会おうね。といいながら、
数日だけど、準備とオープニングを共に過ごせた時間がとても大切な時間となった。

そして、なにより、オープニングの日に、友人のfunai misaさんがはるばるやってきてくれた。
彼女が言ってくれる作品の感想や、意見、質問は、いつも的確で、作家友達の言ってくれることは、ほんとうに大切だなと思う。
これからもお互いに、制作の話をいろいろしたいし、また一緒に展覧会もしたいな。

私が大学で制作を始めた頃は、多くの人に伝わるモノを、というよりも、友人達に何か伝わればいいなという気持ちで制作をしていたけれど、今回は、多くの鑑賞者が、その延長線上にあるのかもしれないと、実感することができた。それは、今回この展覧会を企画されたキュレーターさんのおかげだと思う。

今回一緒に展示した作家さんたちに出会って、彼女たちの作品にふれて、日々感じること、考えること、手を動かすこと、あらためて大切にしなきゃなと思う。

*オープニングを終えたあと、キューレーターさんが、控え室においていた赤い花のブーケを一つずつ作家達に手渡してくれた。スモモの実が付いた甘酸っぱい香りのするブーケ。

 IMG_7964.jpg

 

Please check more information here↓
21st century Museum of Contemporary Art, Kanazawa



展覧会「Inner Voices-内なる声ー」
金沢21世紀美術館
2011/07/30-11/6

世界の中に自分の居場所を見つけていく過程で作り上げら​れるアイデンティティを、人々はどのように引き受けてい​くのでしょうか。多様な表現を以て時代に向き合う現代美​術の作家の中で、自己への縛りをはねのけて自分にとって​可能な道を探し続けようという意欲は、女性の作家たちに​強く見受けられます。なぜなら、既存の価値観や古い現実​のパラダイムを脱し、もうひとつの現実を自ら作り出すこ​とは、権威や通念から自由であろうとすることー自己決定​の自由の獲得が、女性にとっては重要なことだからです。

本展は、経済成長とともにグローバル化の波を受けてきた​1960年代以降に生まれた女性作家たちに注目し、生の​困難さと可能性の両面を人間に見る、彼女たちのInne​r Voicesー内なる声に耳を傾けます。彼女たちは通説​的に「女性的」であることを示すイメージや価値に対して​、あるいは差異によって起きることへの誤解や無理解を、​対立や抵抗ではないかたちで乗り越えようとしています。​芸術表現において自由であることが、女性にとってのみな​らず、世界において同程度に普遍的で重要であることも彼​女たちの実践=作品が示してくれることでしょう。(金沢21世紀美術館ホー​ムページより)

記憶の棲殻−パフォーマンス










photo by 山下一夫
dance: Yangjah
sound: 今西玲子

この写真は、Yangjahさんのdanceをいろいろなところで撮影していらっしゃる方に撮っていただいたもの。
いつもYangjahさんのdanceを撮られているだけあって、あの瞬間を思い出すような写真ばかり。
Yangjahさんの流れるような動きの瞬間をとらえるのは至難の業だと思う。
Yangjahさんと玲子さんの即興パフォーマンスはほんとうに素晴らしく、雲の上にいるかのような、そんな時間だった。


展覧会最終日
展覧会最終日


photo by 福永一夫


photo by 福永一夫


photo by 福永一夫


photo by Haji


photo by Haji